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2007年3月

2007年3月25日 (日)

キハ35

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(写真は高砂線を行くキハ35)

国鉄が昭和36年から製造を開始した通勤形気動車がキハ35系列だ。
系列といっても、当時の国鉄では特急形以外には正式に「系」を用いていなかったから、あくまでもこの呼び方は便宜上のものでしかない。

このシリーズには片運転台、トイレつきのキハ35、トイレなしキハ36、両運転台、トイレなしのキハ30の各形式がある。
僕は高砂では客車担当だったから、これらのクルマを触ったことはないのだが、いつも間近で見る存在ではあった。
入場頻度が客車で言えばオハ35並だったような気もする。

高砂が担当する線区でこの系列が走っていたのは加古川線、和歌山線、桜井線、奈良線、紀勢線、関西線、草津線といった路線が中心で、特に関西線湊町・奈良間がこの系列誕生の有縁の地であるからこそ、高砂の担当車両数が多かったのだろうか。

キハ35は不運な系列かもしれない。
キハ28並の足回りを持ち、当時の国鉄としては最新の横型機関を搭載、意欲に溢れた設計なのだけれども、オールロングシート、外吊り3ドアはそれまでの気動車の持つ朴訥としたイメージからは程遠く、当初に投入された線区でこそ通勤輸送の大任を果たしはしたけれども、それら線区・・関西線、総武線、内房線といった非電化通勤線区がやがて電化されるに伴い、他の線区への転出が行われたけれども、地元利用者の間ではおおむね不評を買ってしまう存在となってしまった。

乗り心地は決して悪くなく、まさに急行形なみで、それが余計にオールロングシート、無造作で大雑把な車内アコモを際立たせていたようにも思う。
加古川線ではキハ20あたりとセットで使われることが多かったが、始発の加古川駅ではいつも、キハ20から座席が埋まっていく。
キハ20の座席がほぼ埋まるとようやくキハ35にも乗客が乗ってくるという有様だった。

車内の造作は101系電車そのもので、不細工なパイプが天井に突き刺さり、白ペンキを塗った天井と合わせ、そこだけでも国鉄の体臭を感じさせるものだったし、この車両の最大の特徴だったあの外吊りドアもまた、決して上等のつくりには見えないものだった。
結果的に、国鉄としてはやがて電化せざるを得なくなる大都市近郊の幹線筋用の気動車を作ってしまったことは、大失敗だったのではないだろうか。
同じ時期に製造されたキハ28のシリーズが今も老朽化しながらも利用者には好評であるのとは非常に対照的な気がする。

ただ、現場からは案外、好評だった部分があったのも確かだ。
特に基地や工場からは、水回りが少なく、作りの単純な車両であるだけに作業がしやすく好かれる面もあった。
反面、外吊りドアの保守には手を焼いたのと、乗客からのクレームを受ける立場の車掌や駅からの評判は良くなかった。

加古川線では組合からの「要求」として「冬季に加古川線北部の谷川支線への乗り入れを避けて欲しい」とまで出されたこともある。
片側3箇所の外吊りドアでは、隙間風もひどく、寒冷地での車内保温が難しく、乗客から敬遠されたのだ。

冬に寒い車両は、夏には暑い・・
窓を全開しても、エンジンの熱気は嫌でも車内に入ってくる・・
しかも満員のロングシートなら余計にイライラが募る。

一度、夏場に奈良線でこの気動車に乗車していて、びっくりしたことがある。
僕は、キハ35に乗っていたのだが、トイレがついている。
土曜日だったか、午後から帰宅の高校生が大勢、乗りこんでいた。
ロングシートで煙草は吸うわ、そこらに寝そべるわ・・大変なことだと感じていた。
注意など出来る雰囲気ではない。
キハのトイレに女子学生が入っていった。
それも5〜6人である。
くわえ煙草のものも居る。
煙草は車内で堂々と吸っているのだから、トイレに行って隠れる必要はないはずだ。
10分以上経ってから彼女たちが上気した顔で出てきた。
中で何が行われていたのか・・今もってよくわからない。

国鉄・JRはクロスシートは車内治安上、問題があることが多い・・とまで言いきっていたこともある。
けれども、線区によってはロングシートだろうがお構いなしで、クロスシートだから・・というのは言いがかりだろう。
僕はキハ35の、それも整備の行き届かない車両の、荒れた雰囲気が、乗客の心まで荒ませてしまうのだろうかと思ってしまうのだけれど。
同じことが、113系や401系の老朽車両が走っていた線区でも感じられたことがある。

加古川線はその点では穏やかな路線だった。
キハ35は乗客にしかめっ面で迎えられながらも、緑の多い路線を淡々と走ってくれた。
阪神電車に似たツートーンのカラーも緑の多い路線には良く似合っていた。
それに、広いロングシートの車内は空いている時は案外、快適なものだ。
白いペンキの天井も、褪せた緑色の壁面も、不恰好な網棚も、開け放した窓も、回る扇風機、エンジンの音、キハ35はどちらかというと夏のイメージだったのかもしれない。
(そう言えば、キハ20といえば冬を連想する・・)
向かい側の車窓に広がる田園風景を、行儀悪く姿勢を崩して座りながら、気だるく眺めたのは、あれはもう何年前になるのだろう。

けっして懐かしくもなく、憧憬などではないが、それでも、心の隅に、夏の暑さとともに残る風景。
キハ35には夏が良く似合うのかもしれない。